アグロフォレストリー:Agroforestry
バナナやパームヤシなどの単一の作目を大量生産するプランテーションへの反省から広がりを見せている環境保全型一次産業がアグロフォレストリーです。
アグロフォレストリーってどんなモノ?特徴とメリット
農業+林業の造語から分かるように、樹木の間にできる空間で農産物を栽培して、農業収益と林業収益の2つを可能にする複合経営です。農林複合経営、混農林業、森林農業 とも呼ばれます。地域ごとに組み合わせる樹種や農産物は異なることに注意したいですね。
持続可能性が相対的に高いため、特に、森林の減少・劣化が激しい熱帯地域で注目されています。多種多様な樹木を植えることで生物多様性にも配慮できるのでしょうね。また、土壌流出の防止や家畜排泄物の土壌への還元などが可能になる点も着目される理由でしょう。
プランテーションがなぜ良くないか。「単一の商品作物」がポイントです。同じ作物を継続して生産する弊害が大きいのです。たとえば、連作障害による病虫害の発生、土壌栄養の急速な劣化、低い生物多様性などです。
このうち、土壌影響の急速な劣化は、連作障害とも関係しているのですが、特に熱帯地域では大きな問題です。というのも、熱帯地域の土地はあまり豊かではないんですね。他地域の豊かな森林と比べて土壌栄養が相対的に少ないのです。そのため、数年で土地が痩せきってしまい、生産ができなくなることもあります。もちろん、化学肥料を大量投入する手法もありますが・・・。
生物種が少ない点も注目したいところです。結局、単一の景観が広がっているだけなので、植生構造も単純、その農産物と共生している生物種数も少ないことから生物多様性が低いのです。
地球上の人口の急激な増加が進んでいる現状では、アグロフォレストリーの重要性は高まっていくと考えられます。
実は伝統的畑作経営のアグロフォレストリー
さて、アグロフォレストリーは、ある意味、伝統的畑作経営です。伝統的農業の1つとしても有名な点に注意する必要があります。つまり、昔から熱帯雨林やそれ以外の地域でも、その場所に住む人々(先住民)が行ってきていました。
よく知られている例としては、アフリカ大陸のサヘル地方で行われているアグロフォレストリーでしょう。畑作地で植えた農産物の間にアカシアを植える方法を採用していました。この方法は研究者によってもたらされたのではなくて、地元の農民が長い年月をかけて編み出し、受け継がれてきたものなんです。なぜ、受け継がれてきたか。アカシアの近くの農産物の収穫量が高いことを発見したからです。農民が知っていたのは、この事実だけですが、いかに観察眼や経験則が大事かが分かる事例でしょう。ちなみに、科学的な事実(収量が増加する理由)としては、アカシアが窒素を固定してくれるので、他より多くの収穫量を得られるということなんです。面白いですよね。
最後に、気をつけたいことが1つあります。プランテーションより環境負荷が少ないんだから、原生林を切り開いてアグロフォレストリーをしちゃえばいいんだよ!というものです。これは非常に危険な発想だと考えています。
もっとも大事なコトは、原生林をこれ以上減少させずに、現状の農地での生産効率や収益を増やすことです。