農村の生態系保全
農村(特に日本)は、水田、里地、里山(主に都市域かもしれませんが)、中間山地などが含まれ、多種多様な環境要素で構成されています。また、適度な人為的なかく乱によって二次的自然が保たれています。その結果、農村の生物多様性は高く、とりわけ、日本の水田には6000種強の生物が生息しているといわれています。
しかし、農業の生産性・効率性の追求や社会的な要因、農薬などの使用や休耕田化によって劣化してきました。
これらの背景をスタート地点として、近年、農村地域の生態系の保全や改善が試みられるようになってきました。ここでは、その具体的な環境保全技術の考え方や手法をまとめます。
農村生態系保全のために重要なコト
もっとも重要なことの1つは、バランス。生産者(人)と野生生物(動植物)がうまく共生できるような保全技術を取り入れることです。そのためには、まず、その場所の生態系の把握が重要です。次に、それらの結果に基づいて、目標とすべき生態系のイメージや保全方針を決定し、施工します。
また、生息地の質を高めることも重要です。やみくもに保全技術を導入すればいいのではなく、作業効率の点と質の向上が最大となるような手法を取り入れる必要があるでしょう。
農村生態系保全のための具体的な技術や事例
一方、環境保全技術の具体的な手法はどうでしょうか。 最近特に有名になった手法は、冬期湛水田や減農薬でしょう。前者は、稲刈り後の水田に水を張り、水生生物の生息地を確保したり、それを捕食する鳥類などに利用してもらうことを想定しています。冬みず田んぼとも言われます。
減農薬では、3割減々や5割減々といわれるものです。化学肥料や農薬をそれぞれ3割、5割減らします。大型鳥類や小型生物への悪影響を低減させようという試みです。
注意しなければいけないことは、減農薬では生産力も低下し(管理人がインタビューしたところ、3割くらい減少するという話でした)、必要な労働力(雑草抜きなど)が増加します。無農薬栽培は言うまでもありません。ただし、こういった試みは歓迎すべきだし、人間にとっても、より影響が少ない農産物を食べることが可能になるメリットがあります。
以上の例は、エコファーマーの認定を受けていることが多いです。エコファーマーとは、「土作り技術」「化学肥料低減技術」「化学農薬低減技術」に取り組む計画を策定・実施し、地方自治体から認定された農業者のことをいいます。
これらの保全・復元技術は、地元の方々が十分納得できるものにすることが大前提です。また、環境保全技術に要するコスト、施工後の維持管理に要する手間やコスト、農村景観、歴史や文化、地域おこしにも配慮する必要があります。
地域おこしの成功例としては、「コウノトリ育むお米(こうのとり米)」や「朱鷺と暮らす郷米(佐渡コシヒカリ)」です。